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2004.03.29

『木曜日に生まれた子ども』 ソーニャ・ハートネット著 金原瑞人訳

「木曜日生まれの子は、さまよう運命にある」マザー・グースの一説どおり、木曜日生まれのティンは、子供のころから家に棲みつくことはなかった。幼い頃、ある事件をきっかけに自分の家の下に穴を掘りはじめ、いつしかそこを自分の居場所にしていった。そんな一風変わった弟ティンと次第に家族がばらばらになっていく様子を姉のハーパーが一人称で綴る。

 オーストラリアのかつては金鉱堀りでにぎわった町にハーパー一家は住んでいた。けっして親の愛情が薄かったわけではない。貧しいながらもそれなりに暮らしていた一家に、次々と災難がふりかかる。大恐慌やきびしい試練の連続。酒におぼれる父、無気力になっていく母、地中にもぐり続けるティン。彼の掘るトンネルはさらに複雑になっていき、いつしか彼は地中から家族を守る存在にまで……。成長したハーパーが当時を振り返りながら、そんな家族の物語を丹念に紡いでいく。そして同時に、七歳から思春期にさしかかる頃までの自分の成長と心境を、その語りににじませる。そのさりげない筆致に、作者ハートネットの才能を感じずにはいられない。

 辛く厳しい現実社会を描きながら、心の安らぎを覚えるのは、地中深く棲みつき、最後には神話になったティンの存在があるからだろうか。その大胆な設定ときびしい現実描写もさることながら、家族や人間をハーパーの視点で素直に浮き彫りにしたところが最大の魅力だろう。YA(ヤングアダルト)の作品であるが、大人が読んでも十分に読み応えがある作品だ。

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巷で見つけた英語
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Now I would like to tell you about my brother, Tin James Augustin Barnabas Flute, he was, born on a Thursday and so fated to his wanderings, but we called him Tin for short. He wasn't my youngest brother, because it's right to count in Caffy, but I never saw Tin an old man or even a young one, so he stays just a boy in my mind. Tin's bound up in childhood forever, as far as my recollection goes, although the last time I saw him he was wizened and looking ancient as the hills. Memory is eccentric, how it stalls when it wants to.
"Thursday's Child" by Sonya Hartnett

2004.03.23

『ヒヤシンス・ブルーの少女』 Susan Vreeland 作

『ヒヤシンス・ブルーの少女』 Susan Vreeland 作 長野 きよみ訳

 八編の短篇がそれぞれ絡まりながらフェルメールの絵を巡って進展し、一つの物語として完結する。
 最初は米国の数学教師コルネリアスが同僚の美術教師に秘密を漏らすところから始まる。その秘密とは、フェルメール作の「ヒヤシンス・ブルーの少女」の絵を所有していること。亡き父の遺品だという。ナチスの親衛隊だった父が、ユダヤ人連衡の折この絵を見つけ、後にユダヤ人の家から盗みだしたのだ。果たして正真正銘のフェルメールの絵だろうか? 

 二編目は、父が絵を盗み出したユダヤ人家族の物語になり、舞台はアムステルダムへ。第二次大戦下、娘ハナのためにこの絵を所有するようになった家族の経緯が語られる。そしてその前のは持ち主は……。「ヒヤシンス・ブルーの少女」の絵の所有を巡って物語が次々に遡り、ついにフェルメールがこの絵を描くようになった動機にまでたどり着く。

 正確な時代背景、決め細やかな描写、どの短篇も読み応えがある。しかも「ヒヤシンス・ブルーの少女」を巡って繰り広げられるそれぞれの人生は、時代も場所も違う物語で変化に富んでいる。構成も内容も申し分ない。

 因みに、フェルメールの作品には「ヒヤシンス・ブルーの少女」というものは存在しない。この物語のために作者が設定した架空の絵である。いかにもフェルメールが描きそうな絵で着想も面白い。

2004.03.19

五輪切符を手にしたU-23

 うん、やりましたね! 今日、国立競技場で生観戦しました。競技場は本当に青一色で揺れ動いていましたよ。
阿部選手のキックの正確さ、大久保選手の俊敏で気迫の強さ、やはり光ってましたね。もちろん田中選手も!

 やっと日本らしいサッカーを観た気がします。バーレン戦とはまるで違いましたから。テレビのインタビューによると、バーレン戦で大久保選手を使わなかったのは、イエローカードの累積を恐れていたからだとか。さすが監督、先を見越していたのですね。そうすれば、最後の二試合で大久保選手を思う存分使えますからね。ふ~む、いろいろ先を考えての采配だったのですか……。

 平山選手がテレビのインタビューに出ていましたが、いつものインタビューと違って、リラックスして、笑顔がとてもよかったです。まだ少年だなと思えるようなくったくのない笑い顔。本当に可愛かったです。これから先が楽しみですね。

 それから、レバノンですが、最下位にもかかわらず、最後まで立派に戦ってすがすがしいです。
 UAEの監督もちゃんと日本を評価してました。やはり見るところは見てますね。

U-23のみなさん、予選突破おめでとう! アテネではもっとすばらしい試合を見せてくださいね。お疲れ様でした。

2004.03.10

"Sleepovers" by Jacqueline Wilson

 五人の少女がアルファベット・ガールスズを結成して、それぞれ誕生日のおとまりパーティーをする物語。といっても、いじめあり、友情あり、悩みありで、小学校低学年の女の子の生活が悲喜こもごも描かれている。また、この歳頃の英国の女の子が、誕生日にどんなプレゼントを持参し、どんなバースデーケーキを食べ、どうやっておとまりを楽しんだか、いろいろわかって大人もけっこう楽しめる。ジャックリーヌ・ウイルソンらしく、いろいろな料理やお菓子もでてきて英国事情を見ることができる。ママたちが子どもの誕生日に腕によりをかけてケーキを作り、パーティーを演出してやる様子もなかなかほほえましい。こんな楽しいパーティをしてもらえば、子どもたちにとってもきっといい思い出になるだろう

 クラスが新しくなって、デイジーは他の四人の女の子とアルファベット・ガールズを結成した。それぞれの頭文字を並べれば、A,B,C,D,Eになるからだ。でも、デイジー以外は昔から仲がいい友だち同士。ちょっと心配だったけど、デイジーも誕生日のおとまりパーティーに誘ってもらえた。それはとってもうれしいけれど、クロエはボス的存在で、なにかとデイジーに辛く当たり、いじわるをする。他の仲間がやさしくしてくれるから平気だけど、本当にクロエのいじわるはひどい。

 しかもデイジーにはちょっと心配事がある。姉のリリーは生まれつき頭が弱く、身体も不自由だ。「うーうー」しかしゃべれないし、車椅子の生活でいろいろ世話が大変だ。こんな家族がいるのにママはおとまりの誕生パーティーを開いてくれるだろうか? もうすぐデイジーの誕生日がやってくる。クロエからみんなの誕生日に招待されたのだから、おかえしをしないなんてずるいと、早くもプレッシャーをかけられている。果たしてママはリリーの世話をしながら、誕生日の準備ができるだろうか? 家もせまくて五人一緒に寝る場所もないし……。クロエの誕生日はすごかった! 台所も広くて立派だし、おへそにピアスをしたとてもナイスなママがいる。どうしよう。うちには知恵遅れのリリーがいるし、おとまりしてもらうと、リリーのことが全部バレてしまう! 

 普通の家庭とはちょっと事情がちがうデイジーの一家。パパとママの機転により、だれよりもすばらしい誕生日おとまりパーティーができた! その演出には、拍手喝采を送らずにはいられない。
 また、それぞれのママが腕によりをかけて作るバースデーケーキが見もの。子どもたちの喜ぶ顔が浮かんでくるようだ。どんなケーキを作り、どんなおとまりをしたか、ここには詳しく書かないでおこう。本を読んでのお楽しみ。

2004.03.07

サッカー&中東雑感

 U-23がUAEに勝ってホッとしましたね。バーレン戦が予想外のドローで、UAEがバーレンに快勝したので、日本は一気に苦しくなりました。メンバーの交代もままならなかったようで……。テレビで見たのですが、最初のバーレン戦は、思いのほか日本人が少なかったように思います。現地はアシュラの休みなので、日本人は多く海外に休暇に出ていたのでしょう。

 実は、私、二度ほどバーレンに住んでいたので、中東の気候や、現地の風習などは経験してるんです。
 アブダビはバーレンよりも湿気は少し低いようです。といっても海に面しているので、湿気はかなりあります。今の時期は、「ハムシーン」という砂嵐の吹く季節ですが、一年の中で一番しのぎやすい時です。サッカー場は、すり鉢状になっているので、余計に暑くて選手は苦しめられたようです。ちょうど凪に当たる時間だったので、風が止まって余計に暑かったのでしょう。

 でも、よく闘ったと思います。田中達也の後半の動きはすばらしかったし、最後のゴールは運も見方してくれたし。半数の選手が身体の調子をくずしていたとか。暑さとプレッシャーと厳しい日程だったので、大変だったと思います。

 アウェイの全試合は、アル・ジャジーラサッカー場で行われました。アル・ジャジーラというのは、カタールのあの放送局の名前と同じです。そう、アルカイダやビン・ラーデンのニュースを流したりしたところです。バーレンには、アル・ジャジーラというスーパー・マーケットもあります。アルはアラビア語の冠詞。ジャジーラは「新しい」という意味。あのサッカー場は新しい方なのでしょう。アル・ジャジーラ放送局は、新しい出来事、ニュースを放送するからでしょう。スーパーは新しい物を取り揃えているという意味ですよね。
 そうそう、バーレンでは、スーパーのことをコールド・ストアとも言います。あの灼熱の場所で、冷房完備で品物を冷やして売っているということから、こういう名前がついたのでしょう。

 さあ、次はホームです。灼熱の国から寒い日本に戻っても体調をくずさないようにして、いい試合をしてもらいたいですね。三月十八日の日本vs.UAEのチケットを買っているので、楽しみです。日本U-23ガンバレー!

2004.03.01

『未来をつくる図書館』 菅谷明子著 岩波新書

 これを読むと、米国の地域社会や文化活動の底の厚さをいやというほど実感させられますね。インターネットの時代になっても、いやインターネットの時代だからこそ、ますます図書館の役割が広がっていくのだと思い知らされました。あの九月十一日のテロ事件のあとのニーヨーク公共図書館のとった行動を見てもそれがわかります

 事件後、テレビはいっせいにテロを報じ、それ一色になりましたが、ニューヨーク公共図書館はもっと地域社会に密着した行動をとったようです。事件の二日後には、テロ事件に関するサイトを立ち上げ、テレビなどマスメディアの報道ですっぽりと抜け落ちている情報を満載したとか。市民が一番欲しい情報、つまり、緊急電話リスト、病院、警察などの緊急窓口、貿易センタービルにオフィスを持つ金融機関の一覧表や、交通機関の運行状況、献血、寄付、ボランティアの各種相談窓口の情報などをいち早く載せたそうです。またそのほかにも、イスラム教、中東を理解するための情報や、被害にあった人の心理カウンセリングを図書館が提供したとか。

 これを見ても日本の図書館のイメージとだいぶ違うのが分ります。また、日本では学問とビジネスとは対極にあると思われがちですが、あちらでは、図書館がビジネス講座を設けて個人企業家を育てたりもするようです。そして低所得者層や年寄りにパソコン講座を開いて、デジタルディバイドの格差が広がらないようにしているとか。

 もうひとつ大きく違うのは、芸術に関して図書館が貢献していることです。映像や音の再生機が各種そろっていて、芝居やダンス、バレーなどの昔の資料を観たり聞いたりできるとか。文字文化ばかりでなく映像や音についてもデータベースがそろっているのですね。

 まったく日本と違うのは、高額所得者や企業などが図書館に寄付をすることでしょうか。もちろん、寄付をすればその人や企業のイメージアップになるからこそ寄付するのでしょうけど……。裏をかえせば図書館の質も問われるということです。あそこの図書館に寄付をした人(企業)ならきっと……というようなメリットがあるからですよね。競争原理が働いて、アメリカの図書館はひとつの企業という感じもします。図書館自体が、どうしたら地域社会に貢献でき、より魅了ある図書館になるか、常に向上心をもっているのですから。

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