2005.04.19

『エミリー』

ISBN4-593-50303-5
マイケル・ビダード作
バーバラ・クーニー画
掛川恭子訳
ほるぷ出版

 春が訪れると、きまってこの絵本を思い出す。
 アメリカの女流詩人エミリー・デッキンソンを題材にしているが、伝記として書かれた絵本ではない。銀色の冬景色から春への変化を織り込みながら、隠遁生活をおくるエミリーの隣に越してきた少女が、印象的なその出逢いを綴る。一様ではない大人の世界を垣間見た少女は、エミリーによって人間が紡ぐ芸術の不思議さと、自然界の根源的な生命力に気づいていく。雪の色と二人のドレスの白を基調に、ブルーベルとヒヤシンスの花をアクセントに配し、乾いたユリの球根から春の息吹を暗示し、自然界の不思議をうたっている。
 人間生活に花と芸術が彩りを添えるように、色と音と詩の効果によって、この物語もいっそう深みを増している。1993年度のコルデコット賞受賞作。

2005.04.16

『ルピナスさん』

                                                             004856840000

    ISBN4-593-50209-8
    バーバラ・クーニー作 絵
    掛川恭子訳
    ほるぷ出版

 写真で撮ったどんなルピナスの花よりもきれいなルピナスがここにある。バーバラ・クーニーの絵はノスタルジックだけど洗練されている。彼女が描くルピナスの花と「ルピナスさん」の物語は、淡い色調を微妙に変化させながら実に多くを語りかけてくる。大人になって読むと、細かい配慮がなされた物語と絵に心を動かされずにはいられない。子どもがそのすべてを絵本から読み取るわけではないだろうが、やはりいい絵本というものはこういうものをいうのだろう。
 凛として生きた女性、夢をかなえた女性、自分の意思で行動した女性、それでいてどこにでもいる普通の優しい女性を、クーニーはあの独特のタッチでさりげなく描いている。特にこの絵本では曲線が美しく効果的に配置されている。生涯三つの名前で呼ばれたルピナスさん。その最初の名前が最後になって繰り返されているところも心憎い。

2004.04.20

『よあけ』 

001104810000_s
    ISBN4-8340-0548-8
    ユリー・シュルヴィッツ作・画
    瀬田貞二訳
    福音館書店

 これほど心落ち着く絵本があるだろうか。物語は最小の言葉で語られ、絵がしみじみと心にしみ入ってくる。主役の絵ですら、心憎いほど簡素なのだ。白いページの真ん中にぽつんと描かれた楕円形の絵。その絵はページをめくるとさらに拡大し、絵の輪郭が浮かび上がってくる。まるで望遠鏡を覗いたように絵がズームーとなって現れる。そう、白い余白は楕円形以外の世界を排除して、私たちを望遠鏡の世界に引き入れる。さらにフォーカスが移動して、新しい物語の始りとなる。まるで映画の手法そのままに、絵の連鎖だけでおのずとそこに物語が出来上がる。まったく同じ構図の絵に描かれたわずかな色調の変化。その微妙な変化に、うっすらと射し始めた日の光を感じ、時間の推移を読み取るのだ。それはあの印象派の画家達が、同じキャンバスの上に時間の推移を点描で捉えようとしたのとよく似ている。彼らたちが浮世絵に影響されたごとく、ユリー・シュルヴィッツは、唐の詩人柳宗元の詩に影響を受けた。東洋の赴きを秘めて、いままさに夜が明けんとす。

2013年12月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        
無料ブログはココログ

Lapislazuli内の検索

**


  • copyright(c) LAPISLAZULI  2004 All rights reserved

aa